口だけ番長やなぁ

なんの根拠もない自信・・・

ほんまアンタは「口だけ番長やなぁ」これも僕の嫁さんの口癖だ。 どう言う意味かというと出来もしないことを約束していざその時になると何事もなかったように平然としている様子のことを言うらしい。口だけ番長と言われることになった要因のひとつは結婚する前に約束した「食洗機」をいまだに買っていないことだ。確かに約束した記憶がある。結婚する意思をお互いに確認した頃だったと思う。ヨドバシに何かの電化製品を一緒に見に行ったときのことだと思う。ちょうど「食洗機」が流行り始めた頃だったと思う。
「こんなんあったらいいよなぁ」買ってもらうことを意識しておねだり的に言ったのではなかったと思う。そんな時、男はどうしても「カッコ」つけたくなるものだ。
「買おうな!」
「えっいいの?」
「うん、時期みて買おうな」そんな話をしたんだろう。要するに覚えていないのだ。
嫌、正確に言うと買うと約束した記憶が無いわけではない。覚えている。家計と他に必要となる家電との兼ね合いなのだ。要するに「優先順位」が低いだけのことだ。実際のところ必要性の度合いが高いか低いかの問題だ。そのプライオリティーと言うものは当然ながら男女間で異なる場合が多い。食事の後、ビールを飲んでいい気分になってウトウトと寝込んでしまうようなぐうたら亭主には「食洗機」ありがたみはあまり響いてこない。しかしソファーに寝っ転がって高イビキを出し始めた旦那を尻目にイライラしながら食器の後片付けをし始める奥様にとっては必要性のプライオリティーはマックスだろう。ソファーで気持ちよさそうにイビキを書いているアザラシに皿のひとつでも投げつけてやりたい気持ちになってもそれは仕方あるまい。いまだにちょっとした痴話喧嘩になると「口だけ番長やからな!いまだに食洗機買ってくれてないしッ」と捨て台詞を吐かれるとことが度々だ。

それでも僕はこいつの旦那は僕しか務まらないだろうなという不思議な自信を持っている。そう思える自信がどこからくるのか?その根拠が僕の内心のどこから湧いてくるのかはいまだ発見できていないのだけれども・・・まぁそれはそれでいいではないかと自分では思っている。

僕の嫁さんはあの言葉にめっぽう弱い

店員さんが言う「最後のおひとつになりますね」

さんざん迷って、前後コンマ5センチのくつを全て試し履きをして「すみません、ちょっと考えますね」と言って少しだけ申し訳なさそうな仕草で頭をさげて店をでる。店員さんも(恐らくだけど?)買ってくれるかどうか途中から算段し始めて(きっと心の中で)買わないだろうなと見切りをつけて、もしかしたら買うほうに20%とか、いやもしかしたら嫁さんが思っているよりも確かに「この人は買わない」と決めているのかもしれないけど・・・前に嫁さんから聞いたことがある。
「店員さんはそんなの分かって接客してくれてるから大丈夫よ」
「そんなの当然でしょ」
「私なんてまだ優しい方だと思うわ。だってちゃんと『すみません』て言うし、服はちゃんと畳んでしまうし」
「ひどい人とかやりっぱなしでさっさと行っちゃうしね」
「ほんと、私から見ててもひどい人とかいっぱい居るよ」
横で店員さんの表情や仕草をヒヤヒヤしながら見ている僕としては気が気ではない。大袈裟に言うと針の筵に座っているとはこの事かもしれないと思ったりする。実際には針の筵とか座ったことがないから分からないのだけれど、実際のところ女子の世界は男子が思っているそれよりも相当なものなのかもしれない。そう思う。

ところがである!嫁さんが真剣に迷っている時に絶妙のタイミングで店員さんが発する殺し文句がある。それが「最後のおひとつです」というやつだ。ベテランの店員さんになればなるほどその殺し文句を控えめに小さな声で丁寧に、さらに少し微笑みながら言うのである。その軽そうで実は思い意味をもつことばには決して勿体ぶったり思わせぶりな素振りは見せない。あくまでも自然に、そして控えめに、でも今お買い求めにならないとすぐに他の人の手に渡ってしまいますよ。余裕だ。この言葉で形勢が逆転されることになる。嫁さんが少し動揺しているのが僕には見える。
「あぁ〜買うな」僕が確信すると同時に目がアウト(会うと)
「どうしようかなぁ〜?」内心決めているはずなのに敢えて合意を求めて聞いてくる。
「買えば」と言うしかないではないか!
「じゃ〜これ」
「勝った(買った)」店員さんの力強いガッツポーズが見えてきそうだ。とても嬉しそうな嫁さんの顔を見ていると僕も心の底から嬉しくなるのだ。