服のセンス

すべてが嫁さん任せである

極々たまにではあるが、女性から「おしゃれですね」と声言われることがある。そうたまにではあるが・・・そんな時、僕はいつも正直に「ありがとうございます。実は全部嫁さんが買ってくれたものを着ているだけなんですよ」すると「あーそうなんですね」内心すこしひっかかりながら笑顔をみせる。だってそうではないか!「あーそうなんですね」という言葉の裏には『なぁ〜んだ、一見おしゃれに見えたけど実の所は奥様の指示通りに着ているだけで特にあんたの趣味やセンスじゃないのね』と言っているのと同じではないのか?そんなうがった見方をしても仕方ない。事実、そうなのだ。

「これなんかどう?」
「うぅ〜ん、なんか好きじゃないな」
「これは?」こんな会話をしながら店内を物色する。結婚する前の僕の服装はというとジーンズにポロシャツといった特に味気も変化もないどこにでも居そうなおっさんだった。でも当時はおっさんとはさほど思ってもいなかったし、自分では「ダサい」とは一切思ってもいなかった。
「前はダッサいカッコしてたのよね」と嫁さんは笑っていた。まず僕が変わったのは色の効いた服を自然に着れるようになった。赤、緑、黄色など絶対に自分では選ばない色や柄物をあえて勧めて着せてくれた。そうすることで自分の満足感を得ているようにも思えた。
試着室で着替えてカーテンを開けて審査員の嫁さんに見てもらう。
「うん、いいんちゃう」満足そうに少し笑いながら嫁さんが言う。
「こっちの色も買っておけば?」そう言って別の色の商品を勧めてくる。
「ちょっと試してみるわ」そうしてまたカーテンを開けて外にでると
「うん、おっけ」まるでファッションショーのデザイナーがモデルの着こなしを再確認しているような感覚なのかもしれない。こんな買い物をしているときはとても楽しい。なにより嫁さんが楽しくしていることが嬉しい。
「着ると着こなすはちゃうねん」嫁さんはそんな事を言う。最近、少し分かってきたような気もするがきっと嫁さんに言わせるとまだまだなんだろうなと思うのである。

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