奥様方はサプライズがお好き

嫁さんの期待を裏切り続けてはや何年?

何故、世の女性たちは旦那や彼氏からのサプライズがこうも大好きなんだろうか?僕はことある事に奥様から集中砲火を一身に浴びることになる。最大の難関は奥様の誕生日だと思われそうだが実は誕生日はなかなかサプライズにはなりにくいのだ。答えは単純で誕生日というのはお互いに何かがあると一年の中で一番予測がつきやすい日だからだ。なのでサプライズにはならない。

結婚する前の僕の誕生日のことだった。当時はスマホはなかったが今で言う「ガラケー」でラインみたいなリアルタイムでやり取りができるアプリはあった。当時のカップルたちは携帯キャリアが提供するそれらのコミュニケーションアプリで必死に愛を語り合ったものだ。
「お誕生日おめでとう」嫁さんになる前の彼女からメッセージが届いた。
「ありがとう」すぐに返信する。当然である。今もその気持ちはまったく変わらないが当時は結婚を意識していた時期だし、自分の誠意を示しうる手段でもあった。なにせ僕たちは大阪と福岡という500キロもの遠距離恋愛だったからだ。
「今日は何するん?」
「まわりには誕生日とか言ってないし、夕方軽く○○さんと軽く飲んで帰るつもりだよ」
「そっか、気をつけてね」
「帰ったらまた連絡するね」僕はそれだけで本当に幸せな気持ちになれた。そんな存在だった。断っておくが「存在だった」というのは当時の気持ちを今表しているために過去形で表現しているだけであって今もその気持ちは一切変わらない。誤解を招きかねないので念の為に記しておきたい。はい、念の為。

5時半に仕事を終えた僕は嫁さんに宣言したとおり当時の上司の○○さんと会社を出て近くの居酒屋で本当に軽く飲むことにした。軽くというのには僕なりの訳があった。会社が終わってすぐに家に帰るというのも味気ないし、かと言って上司と一緒に浴びるhど飲むというのも気が引けた。なんたって今日は誕生日だからだ。家に帰ってゆっくりとガラケーのコミュニケーションアプリで嫁さんになる前の彼女と話したいという気持ちがあったからだ。なので「軽く飲む」という選択に辿り着いたのだった。ところがこの「軽く飲む」という選択が後から大きな意味をもつことになるのだった。

会社を出る前に「会社でてこれから軽く飲みに行くわ」とメッセージを入れておいた。「はいよ、気をつけてね」すぐに返事があった。居酒屋では上司の○○さんと仕事の話題と軽いつまみで生ビールを2杯程度のんで小一時間でお開きになった。
「これから帰るわ」メッセージを送ると
「はーい、了解」いつものようにすぐに返事がきた。それから僕はいつものようにバスに乗って家路についた。嫁さんになる彼女は週末には何度も大阪から福岡まで新幹線に乗って遊びにきてくれていた。僕の会社から自宅までのバスの順路はよく知っていたし今僕がどこにいるかを知らせることで安心してくれるだろうと「今、六本松のバス停だよ」などとバスが走る道順をリアルタイムで連絡した。そうメッセージを送るたびに
「はいよ😀」とすぐに返信が届いた。自宅に近いいつものバス停で降りてから家につくまでの間も何度かメッセージを送信した。そして
「ただいまぁ〜」家の鍵を開ける前にメッセージを送って扉を開けると暗いはずの家の中が明るかった。不思議に思いながら上がっていくと部屋の小さなソファに嫁さんになる前の彼女が笑顔で座っていた。
「うわッ」本当に驚いた。嬉しかった!最高のサプライズだった。わざわざ会社を午後半してくれて大阪から福岡まで来てくれたのだった。それもそれとなく僕の今日の予定まで確認して、なんとわざわざカセットコンロと上等のすき焼き用のお肉まで仕入れてきてくれていたのだ。当然、白菜や糸蒟蒻に焼き豆腐も買い込んできてくれていたのだ。ここで『居酒屋で軽く済ませたこと』が意味をもつことになったのだ。僕の誕生日に愛のすき焼きでお腹いっぱいに食べたのだった。これが嫁さんになる前の僕の彼女が僕にしてくれた最高のサプライズだ。
「あんたのサプライズでは全然驚かへんわ」と嫁さんに言われ続ける理由だ。