洋服くらい若者らしくしてないと相手にされなくなるよ!
前にも書いたと思うが僕の服装はほとんど全部が嫁さんの見立てだ。結婚する前の付き合っている時のことだから10年以上も前のことだ。その頃の僕は今とは大きく違っていた。痩せていた。身長は178センチ、体重は80キロはなかったと思う。二人で一緒に買い物していた時のことだ。話の流れから僕のジーパンを買うことになった。その頃の僕は「Levis」の501こそがジーパンの中の最高峰という認識しかなかった。ましてやジーパンのことを「デニム」と称することなど恥ずかしくで口に出したりできない変な硬派な奴だった。現にいっちょらの履き慣れて色がいい具合に薄くなり始めている Levisの501さえ履いていればそれなりにカッコよく見られているんだろうくらいの自信は持っていた。
「これどう?」嫁さんが手に取って僕に差し出してくれてのがDieselのフレアジーンズだった。
「ウエストは合う?履いてみたら?」
「うん」僕は促されるままに選んでもらったサイズとひとう上のサイズを持って試着室に入った。メンズのフレアジーンズは今のレディーズと違ってローサイズの腰で履くデザインだった。試着室の中で値札を見て驚いた。確か2万円を優に超えていたと思う。そんな驚いた様子を悟られないように心を落ち着けるには試着室は適している。そして何食わぬ顔で小さなカーテンを開けて外にでて聞いた
「どう?」
「うん、いいと思うけど」自信を持って勧めた結果が予想以上に似合っていたんだろう。それもそのはずだ。僕はさっきも書いたけど当時は痩せていたしそれまで買ったジーパンの裾は切ることなく履けていた。既製品のウエストと股下のバランスが仕立てたみたいにジャストフィットする体型だった。
「じゃ買おうかな」値段のことは少し引っかかってはいたが「せこい」と思われるのが憚られて買ったのを今でも覚えている。イアリアのブランドだということも同時に教えてもらった。
その頃から嫁さんが僕に常々言ってくれていた事がある。
「あのね、せめて服装くらい若者に流行っているものを着てないとダメよ」
「あんたはいつも態度が大きいから若い人が話しづらいんだって」
「だから服装くらい若者らしい格好しとかないと話してくれないんだから」
「いつも目線を下げて若い人たちと話しとかないと老けるから」
「だから若い格好しときよ」Dieselの値段が高いことは百も承知だったのだろう。でもその頃から僕の嫁さんは僕のことを思ってくれていたのだ。その時初めて買った Dieselのフレアジーンズは今も大切にタンスにしまってある。
でも、もうウエストが入らない。