ZARAにて

はっとした一言、反省

食材のまとめ買いに嫁さんと一緒に出掛けた。最近は eコマース効果でポイントも溜まってお得感もあっていろいろと活用している。僕はさほど気にしてポイントは気にしてはいない。どちらかというと小銭が出ないことにeコマースの便利さを実感しているほうだ。嫁さんはどうもこまかくチェックしているようだ。でも僕は決してその中身には関わらないようにしている。
「ちょっと上のZARA寄っていい?」食材を買い込んだ嫁さんが聞いてきた。
「うん,いいで」ちょうど会社へ来ていく夏のシャツかポロシャツでも欲しいと思っていたし好都合だ。エレベーターで5階まで上がってショッピングモールの中を手をつないでZARAまでゆっくりと歩いた。
「えらい人、少ないなぁ」僕が言うと
「平日はこんなもんやで」嫁さんが応える
「そっかぁ」ZARAに着くと,僕はメンズ見てくるわと嫁さんに声をかけて右奥へと進んでいった。
暫らく見て回って気に入った白のポロシャツを試着していると嫁さんが近づいてきた。
「ちょっと着てみるわ」
「はいよ」
「どう?」
「いいんちゃう。でも白やとちょっとお腹、目立つなぁ~」息を吸ってお腹を引っ込めると
「無理無理」と言ってケラケラ笑った。こんなひと時が楽しい。僕は基本的に嫁さんから許可が出ないとその服を買わない。何度も自身の趣味で買った服で後悔しているからだ。試着した他の服を返して試着コーナーを出た。嫁さんはすぐ前で待っていてくれた。
「何かいいのあったん?」僕が聞くと
「ちょっとサイケ調のパンツがあってん」と言って僕をレディースの方へ引っ張っていく。
「どうこれ?」いろんな幾何学的な模様の中に原色とは違う薄いきれいな色たちが塗り重なって雰囲気のあるパンツを右手で持ち上げて見せてきた。
「いいんちゃう、着てみたら?」僕がそう言うと
「うん」とサイズを確認してもと来た服と服の間を抜けて試着コーナーにすっと入っていった。僕は入り口から少し離れたところで、且つ嫁さんが開けたカーテンが見える位置で嫁さんが着替えて出てくるのを待つ。すぐにカーテンが開いて嫁さんがサイケ調のパンツを着て出てきた。
「どう?」肥を出さずに口だけを動かして聞いてくる。
「でかい」とだけ声にださずに僕が答える。すると嫁さんがスタッフに頭をさげて何か言っている。すると店内のスタッフが同じサイケ調のパンツを持ってすぐに現れた。インカムで小さいサイズをお願いしたんだな。暫らくすると閉まっていたカーテンが開いて嫁さんが出てきた。
「どう?」口だけを動かしてこっちを見ている。僕は笑って
「おっけー」と返す。
パンツを抱えて僕のほうに帰ってきた。
「いい感じやったで」
「せやろぉ~好きやねんサイケ調」
「他は?」
「うぅん、いい」
「じゃ支払いするわ」そう言って僕の白いポロシャツと嫁さんのサイケ調にパンツを持ってレジに並んだ。すぐに順番が来て支払いを済ませて店をでようとした時だった。
「久しぶりに服買ってもらった」横を歩いていた嫁さんが小さな声でぼそっと言った。ハッとして嫁さんを見た。
「何か月ぶりやろ?」嫁さん自身はちょこちょこ服は買っているようだった。決して高価な服じゃない。それは普段見ていればすぐにわかる。出かける前に着替えた姿をみて
「あっそれ買ったんだ、いいじゃん」
「いいやろぉ~この前、セールで見つけて買っといてん」そんな会話をしたりしていた。でも、前みたいに一緒に店で見て買ったのは確かに久しぶりだった。嫁さんが嬉しそう言った「買ってもらった」という感謝を表す受動態の表現が僕には少し寂しそうに聞こえたのだった。ハッとした。
それは言わずに手を繋いで一緒にZARAを出た。