やっぱ、旨い

僕も嫁さんもビールが大好き

今でこそ自宅でお平日の夕食時にはアルコールは無しという自身の健康のためのルールには極力従ってはいるのだが、翌日がお休みの夜は独自のアルコール解禁という特別ルールも持っているのだ。お休みとは祝日をさしているわけではなく平日であっても明日は有給をとると決めると飲めるのである。なので原則として平日は飲みませんと宣言している世間の真面目なサラリーマンとは少し違う。要するに少しは自身の健康を気にはしていますよと自分のことを気にしてくれている嫁さんの手前だ。買い物ついでに二人でよく行くスペイン料理のお店がある。ついこの週末にも一緒に出かけた。いつもなら大好きなIPAビールを注文するのだが、その日ばかりはテーブルに着くなりフロアスタッフがメニューを片手持ってきてくれて申し訳なさそうに
「すみません、IPA売り切れちゃってて・・・」
一瞬固まりかけた。それを楽しみに来たのに・・・
「えぇ~」声には出さずに顔を見合わせた。そう私たちは控えめな紳士に淑女なのだ。たいして若くもない。大袈裟に驚いてみせてもスタッフもどうリアクションしたらいいか困ってしまうはずだ。改めてメニューに目を落としながら、
「あっ、PAULANER 置いてるんだ」今まで何度も見ていたメニューなのに全然気づいていなかった。


これ、ドイツのビール、IPAじゃないけど美味しいよ。僕が言うと、嫁さんもうなづいた。
「じゃ、PAULANER をふたつ」
「かしこまりました」丁寧に少し頭をさげてホールスタッフは下がっていった。
「ドイツやベルギーのビールは冷えてなくても美味しいんだよ」
「そういえばそうね」
「日本のビールはキンキンにとまでは言わないけど、やっぱり冷えていることが旨さの前提になっているけど、これらは違う」ちょっと得意そうに僕が講釈をたれているのを嫁さんは前でだまって聞いてくれている。ホールスタッフが失礼しますとビールをふたつ背の高いジョッキにいれて持ってきてくれた。
「かんぱーい」
笑顔になれるビールだ。買い物ついでの日曜日の夕方は、IPAかPAULANERがいいね 🙂

あれは俺だよ。

タオルハンガーの攻防

夕食も終わってリビングでくつろいでいると
「んもぉ~腹立つわぁ」と言いながら嫁さんが入ってきた。
「どうしたん?」聞くと
「洗面台のよこにあるタオルハンガーがまた落ちてんやんかぁ」
「そうなんや」
「吸盤が弱いんかなぁ~最近よく落ちるねん」
「気圧のせいかもな?」
「気圧ッ?そんなことあるぅ?」
「吸盤だからもしかしたら関係あるかなと思って」と話を濁そうとしたのだけれど
「やっぱ100均だからかなぁ」と、かなり悔しそうにしている。
「あれかって来たの去年だったよねぁ」と僕が言うと、一瞬嫁さんが怪訝な顔をして僕をみた。
「あれ買って来たのうちやで」今度は僕が固まった。
「おれやで」
「ちゃがうちがう、うちやって!覚えてるもん」
「俺だって、俺が会社の帰りにラインで頼まれて駅のSeriaで買ってきたやん」
「違うって、うちやって」僕は絶対的な自信があった。あれをかって来たのは僕だ。
今回は内心、嫁さんをからかうのもいいかなと思いつつ引き下がらないことにして続けた。
「違う、ちがう、俺だって。はっきり覚えてるもん」それから暫らく俺だ、うちやってと敵も引き下がらない。最後に
「あのハンガーは横幅をスライドさせて調整できるようになってるねん。そんな気の利いたもんあんたが買うわけないやん」
そう言っておくの寝室へんと消えていった。
『気の利いたもん』を僕が買うはずがないという何の根拠もない理由づけにちょっと可笑しくなったのでした。
そして心のなかで呟いた。あれを買って来たのは俺だよ。って、つい昨夜の出来事でした。