前はよく笑わせてくれたで
「お金なんかいらん、会話で私を笑わせてくれ」
月末の木曜日の夜だった。リビングでしんみりと話をしていた時だった。家計の話だ。我が家は決して裕福ではなくてそれこそ嫁さんがなんとか繋いでくれているといった状況だ。毎年海外に旅行に行くわけでもないし毎月での家庭内のイベントを計画しているわけでもなくて、たまにそれも極たまにだけど温泉旅行に行ったりちょっぴり贅沢なディナーを楽しんだりとそんなふうだ。ここんとこ厳しい家計が続いているせいか確かに会話が少なくなっているとは認識していた。そんな状況の中での一言だった。
ハッとした。続いて嫁さんが少し寂しそうに言ったひと言はきつかった。
「前はよく笑わせてくれたで」「いろいろやってくれたで」「うちはお金なんていらんねん」腹の底にずぅ〜ときた。それから僕は必死に前を取り戻そうと出張先からもラインビデオで夜には何をしているかを報告するようにしているし、朝なんてキッチンで朝食を作ってくれている嫁さんに声をかけて会話している。ずっと笑って一緒に生きて行きたい。そう思っているんです。
義父が眠る一心寺 @天王寺にて