大切な日

出張先で思うこと

年に一度の大切な大切な一日中がやってくる。ぼくを試すかのようにじわじわと希望商品の話題が会話にあがる。百貨店を特に予定もなくプラプラ歩いている時にも

「あっちょっと待って、こっち」そう言われてシューズショップに引き込まれる。

「ちょっと履かせてもらっていいですか?」店員さんにサイズを告げる。足元だけを映す鏡を見ながら

「これいいわぁ」

「でもベージュかなぁ?」

「すみません、ありがとう」店員さんに丁寧にお断りして店をでる。

「やっぱ黒やわ」これもプレゼント商品の候補だからねと言わんばかりだ。

「ちゃんと靴のサイズ、覚えたんやろな」と目が念押ししてきているのが分かる。

それはサプライズを期待している反面、現実的な側面もしっかり抑えていて、もしこの靴をプレゼントで買うなら色は黒だよ。

サイズは23cmなって教えてくれているわけなのだ。なのに鈍感なぼくは嫁さんの気遣いにはまったく気づかずに頓珍漢なプレゼントを買ってしまうのだ。

実は今、ぼくは長期の出張中で家にはいない。出張の最初は晴れやかな自由を得た気分になれる。昼間は当然ながら予定された仕事が待っているのだが夜はあえて予定を入れてない日も多い。しかも今回の出張はひとり仕事で、ある程度というか自由気ままな出張なのだ。夕方が近づいてくると心の中で少しニマニマとした気持ちになってくる。飛び込みで居酒屋に行くこともあるし前に寄った店を思い出して入ることもある。基本夕食を兼ねたひとり飲みだ。それでも正直言って3日め、4日めになると飽きてしまうのかそれとも寂しくなるのか面白みがなくなってしまうのだ。結局コンビニでビールとつまみを買って間に合わせるというパターンになってしまう。普段なら面倒な奥さんから届くラインにもついつい早めに反応してしまうのだ。すると

「あれ?今日は早いな、どうしたん?」と聞いてくる。寂しくなったとは決して言わない。どこまで気づいているかは知らないが

あれこれとラインを送ってくる。明日は誰々とどこどこに買い物に行く予定だとか数日間の出来事を聞かされてはいるが頭には残っていない。まぁそんな会話が大切なんだろうけどどうも苦手なのだ。来週には帰るから待っていてくれと心の中で愛を叫ぶのだ。