悪いのはいつも僕さッ
クリスマスを前に嫁さんが風邪を引いた。基本的に自分に起こる負の出来事の起因は自分以外にあるというのが嫁さんの考え方だ。いつも風邪をひくとすぐに「あんたが出張先から風邪をもらってくるから私に移ったんや」と僕を責めるのだ。嫁さんはいつも自分に起こる負の出来事が全て僕に起因していると主張するのだ。でもごくたまに嫁さん自身でも、いくらなんでもそれは僕が起因とはならないだろうと思うこともあるらしく、まさに今回の風邪っぴきがそうだ。2日前にひき始めから全く僕に攻め入って来ない。誰にも鬱憤を当てつけられずに大人しく小さくなっている。でも一言だけ「この風邪薬、全然効かへんわ、パブロンあかんなぁ」とひとり呟いている。とにかくどこまで行っても自分だけは悪くないらしい。
クリスマスの飾りつけをみるといつも思うことがある。確かに部屋の中をかわいい小物や玄関のリースを見るとそれなりに気分はクリスマスモードにはなってくる。食卓のマットが赤基調に変わるとフムフムやっているなと内心褒めてあげたくなるのだ。ただ困ったこともある。それは夕食のときに突然始まる。
「あんたまったく気づいてへんなぁ」
「はぁ?何が?」
「ひとが苦労して飾りつけしてるのに何も言ってくれへんし」
「お疲れさん、いい感じやん」
「いっつも私が言ってから、そうやっていうだけやろぉ~ホンマやりがいないわ」
「雰囲気でてるしいい感じって思ってたで」こうなると何を言ってもとりつくろえないのだ。どちらかと言うと僕は「釣った魚にはエサをあげない」タイプのようだ。それは少なからず自覚している。なので嫁さんに何かしてあげることは少ない。いつもあんたはなんもしてくれへんと愚痴られている。その気持ちがない訳ではないがやるときは大きなことを内心思い続けているのだけど、世間からみると女性には小さなことをたくさんするほうが効果的らしい。それに比べて僕の嫁さんは僕のためだじゃないとは思うが結局見て楽しむのは実質的には僕と嫁さんしかいないのにあれやこれやと部屋中を季節に合わせて飾りつけに凝っている。それが好きなのだと言ってしまえばそれまでだけど、どうも僕を喜ばせたいと思っているようなのだ。そして落胆して出る言葉が
「あんたまったく気づいてへんなぁ」なのだ。リビングのショーケースの中に小さな妖精の置物にどうやって気づけというのか?と言いたくもなるが決して言わない。部屋の隅には新しく買ってきた小さなクリスマスツリーが飾られている。嫁さんが言う。
「これめっちゃ安かってん。思わず買ってもうたわ」嫁さんのお蔭で今年も楽しいクリスマスだった。