嫁さんの分からない思考回路

なんでそうなるん?

僕は嫁さんに対してずっと不思議に思っていることがある。それは嫁さんが自分と同じことを僕も考えていると思って話かけてくるところだ。その日、僕は嫁さんよりも30分程度遅れて起きた。リビングのテーブルで小さな鏡を覗き込んでいる嫁さんに「おはよう」といつものように小さく声をかけた。「おはよう」いつもより少し低めの聞こえるか聞こえなかの声で返事が帰ってきた。そしてずっと鏡を覗き込んでいたはずの嫁さんがなぜか上目遣いに僕を見たようだった。一瞬だけど心の中で「ん?」と思ったのだが、さほど気にする事なくテーブルの横を通り抜けてトイレへいった。用をすませてリビングに戻ってゆっくりと僕の指定席に座った。時計は9時を少し回ってる。週末の朝の情報番組がコマーシャルになったと同時に鏡から顔をあげた嫁さんが
「なんで起きないのに目覚ましをセットしてるんよ?」「今朝、8時に目覚ましかけてたやろ!」「目覚ましセットしたんなら起きろよ!」と一気に捲し立ててきた。「へっ?」思い出した。確かに昨夜寝る前にふとした気持ちの昂りから『明日は8時に起きてやろっと』と思い立ってスマホの目覚ましをセットして寝たのだった。戸惑っている僕の様子をみて嫁さんが畳みかけてきた。大義名分が明確で嫁さんに分がある時の嫁さんは限りなく強い。「あんたがセットした目覚ましで起こされてんでぇ」
「もうちょっとゆっくり寝ようと思ってたのに、ったく」「いつも言ってるやろぉ 起きないなら目覚ましセットするなって!」「いやぁ~それは言われたことないけどなぁ」と思いながら「あぁごめん」というより仕方ない。
その後も何か文句を並べているが、聞いているふりをして聞き流していると「聞いてんのかぁ?」と確認の質問がとんでくる「聞いてるよぉ」申し訳なさそうな顔で返事をしながら嵐が過ぎるのを待つしかないのだ。きっと嫌な目覚ましに起こされてからずっとぼくに対するイライラを募らせていたんだろうなぁ~そして一通り言いたいこを言い切ったのだろう。しばらくすると嵐はなんとか収まった。

「よかったぁ~やれやれだ」と唐突に「何送ろうかなぁ?」何か会話をしていたわけではないし、嫁さんはしきりとスマホで何か調べているようだった。「送る?誰に?何を????」何のことを言ってるのかさっぱり検討がつかない。何のことを言っているんだろ?誰の話だろう?最近の嫁さんとのトピックを頭の中で必死に思い出そうとするけどまったく心当たりがない。「どうするん?」当たり障りのなさそうな返事を返してみた。そもそも何故に女性は自分が考えていることを相手も同じように考えているという想定で突然話しかけてくるのだろうか?ぼくが学校を卒業して入社した会社の研修で教わったことの中に「相手は何も知らないということを忘れるな」というのがあった。先輩社員から「お前が説明する製品のことは相手はまったく知らない、その事を忘れるなよ」そう教わった。僕のためにも嫁さんにこの事を教えてあげたい。思い出したぁ~実家のお母さんに送る誕生日プレゼントのことだ。先週、そんな話をしていたことを思い出した。そして「おかあさんのプレゼントやろ?」さも、何もなかったような素振りで返事をすると、「うん、何がいいやろ?」嫁さんはスマホから目を離すことなく小さな声で返事を返してきた。よかった。スムーズに会話がつながった。もしぼくが嫁さんの「何送ろうかなぁ?」を聞いて、「何のこと?」と返事をしたとしたらどうなっていただろか?「あんたはいっつも私の話をきいてないやろ!」から始まって昔の揉め事をひとつひとつ掘り起こされて険悪な感じの朝になるところだった。

僕の嫁さんはこんな感じ

ぼくの嫁さんは38歳でとおしています。いや、そう見えなくもなくて美人タイプではあります。本当の年齢は言えません。なぜかは分かりませんがぼくよりぼくの事をわかってくれていてぼくの事をずっと考えてくれています。その嫁さんは今、無防備でリビングのビーズクッションに身を委ねて小さなイビキを奏でながら気持ちよさそうに寝ています。最近少し顔つきとお尻が丸くなったような気がします。口の悪さと良しにつけ悪きにつけ何事にも一生懸命の性格は変わっていません。僕に対する厳しい指摘や気分のいい時の甘え癖も健在です。お出掛けするときも変わらず手を繋いで歩きます。電車に乗っても吊り革を持つ僕の二の腕に捕まって自分の体を揺れから支えます。

この前も出かける前にこんなことがありました。
「これ前に一緒に買ったジーンズやねんけどなぁ断捨離してたら出てきてんやんか
「覚えてへんやろぉけど」
「履けてん(笑顔 ええやろ?」
「どう?」
「いいんちゃう」奥の部屋に戻ったかと思うとすぐにそのジーンズを履いて出てきた。
「なぁ どう?」否定する返事を許さない笑顔で聞かれると肯定するしかないだろう。
でも実際のところ似合ってると思ったし僕まで嬉しくさせてくれる笑顔だ。

スゥースゥーと寝息をたてていたかと思うとムクっと起き上がって「寝るわ」今まで寝てたのにそう言い残して寝室に消えて行きました。

このエッセイは僕と僕の嫁さんとのごくありふれた生活の一部を少しだけ盛ったりしながら老後に読み返すことを想定して書いていく人生の栞のようなものです。振り返った時にあの時、そんなことがあったなぁとふたりで思い返そうと思っています。でも、今僕がこれを書いていることは嫁さんには内緒にしとこうと思っています。