用意周到の嫁さんと

行き当たりばったりの僕

スーパーの調味料のコーナーを見渡しながら嫁さんがぶつぶつと念仏でも唱えているように何かを言っている。
「どしたん?」
「ラー油ってあったっけ?」
「あったと思うで」そう僕が答えると、
「あんたの言うことは当てにならんからな、買っとくわ」
「・・・」
「だっていっつもそうやろ、ちょっとしか残ってないのにあるって言うやろッ!」
「あるから」僕のせこさと言うか貧乏性を咎められてつい不機嫌に返事をすると
「ほんま、ケチくさいねんから」嫁さんはそう言うと次の補充品を探してツカツカと陳列棚の奥の方へと歩いていった。後ろから少し間をあけてついていく
「あぁマヨネーズあったっけな?」また念仏を唱えている。でも聞かれていないので僕は何も答えない。すると
「あっやっぱいいわ、あっちで買うわ」よそのお店の方が安く売っていることを思い出したようだ。

どちらかと言うと僕は行き当たりばったりのその場凌ぎのタイプで何か問題が起こらないと行動しない。問題が起こる前からそうなったらどうしようとか起こってもいない事柄を事前に心配するようなことは一切しない。でも嫁さんは真逆だ。なんでも事前にきちんと調べてその事象に対してきちんと準備をして望むタイプだ。町内会の役員決めの前などでは「選ばれたら絶対嫌やわ、会合いくのやめようかな」とか必死に祈っている。そういう性格だからなのかトイレットペーパー、ティッシュなどの日用品の消耗品から始まって胡椒やラー油などの調味料までいざ使うという段になって「あー無いッ」とかいう事態に陥ったことは一切ない。大したもんだ。二人とも福岡に住んでいたこともあって水炊きが大好きだ。ポン酢は「朝日ポン酢」と決まっている。常に2本の予備がある。

話は変わるが僕は嫁さんのオナラを聞いたことがない。結婚する前は当然だけれども結婚して一緒の家で暮らしているにも関わらずである。生理現象だしどうしているのか不思議でならない。だいぶ前に直接聞いたことがある。
「あのさぁなんで屁しないの?」突然の質問で少し驚いたようだった。
「えッ?」
「一回も聞いたことないんだけど」
「だって恥ずかしいやろ」少しだけ顔が赤くなったような気がした。
「ふぅ〜ん、そっか」
「あんたと違うねん」恥ずかしさを打ち消すようにわざときつく言い返してきた。

僕はリビングのソファーでこっそりスカしたりすることがある。嫁さんはテーブルの椅子で座っている。この距離なら大丈夫だ。そう自信を持ってスカす。しばらくすると
「臭いッ、屁したやろッ」
「エッ」
「もぉほんまデリカシーのない奴やな、結婚せんかったらよかったわ、もぉ」
オナラで離婚されることはまずないだろう。たぶん・・・


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