週末の夕食にはビールを添えて

350mmじゃなくて、500mmです 🙂

会社から自宅までは徒歩と電車を乗り継いで1時間10分ほどかかる。接待などの予定がない日は必ず会社を出る時には「会社出たよ」とラインをいれるようにしている。嫁さんはそのラインを合図に夕方からしかかっていた夕食の出来上がりを僕の帰り時間から逆算して仕上げに取り掛かるのだろう。毎回、僕が家につく頃にはダイニングテーブルの上に可愛く配置されている。

基本的に僕は週末しかアルコールを口にしない。と、偉そうに書いたが実は以前は毎夕食の度に飲んでいた。週末には昼のビールも当たり前だった。僕は飲む時は白米は食べない。必然的に夕食のおかずはちょっとした塩分が多めのアテ系のものが多く並ぶことになる。その頃は嫁さんも付き合いで飲んでくれていた。調子がいいと1本では足りずに頬を赤くしてニコッとしながら2本目に手を伸ばすことも度々だった。そんな夢のような日常は長くは続かない。ある日突然、嫁さん言った。
「平日飲むのやめるわ」
「えッ?」あえて理由は聞かない。聞かずともそう決意させた理由はすぐ納得できた。太ったからだ。確かに顔がぷっくりしてきたようだった。それでも僕は暫くの間、飲むことをやめたりしなかった。嫁さんも何も言わなかったし僕が飲み続けていることに対して特に気にすることなく楽しい夕食ではあった。ただ、嫁さんが飲んでない側で飲み続けていても楽しくないことに気付かされた。そう感じ始めて暫くして僕もウィークデーの夕食時に飲むことをやめた。愛だと思っている。でも、嫁さんが寝静まってから何度か飲んだことはある。

「あぁ〜お腹すいたわ」
「これ、美味いなぁ〜 何?」
「前にも作ったけど」
「えっそうだっけ?」冷や汗をかきながら言うと嫁さんは持っていた箸をおいて
「ほんま、つくり甲斐ないわ」
「あはは」汗・汗・汗 そんな会話も何度となく繰り返されるのだ。
「この出汁、美味しいわぁ」褒めることは大切だ。
「美味しいやろぉ」
「昆布?」
「ぶー」そんな会話も楽しい。嫁さんは隠し味に使われている食材を当てらると嬉しそうだし、当たらなくても嬉しそうにしている。こんな会話をしながら夕食を食べている時間をとても幸せだと思う。嫁さんが作るおかずのなかで大好きなのは「だし巻き卵」です。

そして週末、ラインの合図を送信してきっちり1時間と10分当然、
「ただいまぁ」リビングに行くと当然、白米はテーブルには並んでいない。
「おっブリカマ?」
「うん、今日安売りしててん」めちゃ機嫌がいい。スーツを脱いで部屋着に着替えてテーブルに着いてビールの缶の蓋を開ける。嫁さんの分の蓋を開けるのは僕の勤めだ。
「かんぱーい」僕は缶から直接飲むが嫁さんはグラスについて飲む。アルミ缶特有の匂いが好きじゃないらしい。
「このカマ、美味いなぁ」
「うん」ビールもすすむ。断っておくが350mmじゃなくて500mmだ。
「どうしようなか」嫁さんが空になった一本目の缶を小さく振りながら言う。
「飲めば?」すでに僕は2本目も半分を過ぎている。
「一本は飲まれへんわぁ」ちょっと可愛く言う。昔でいうぶりっ子というやつだ。
「いいよ、飲めなかったら俺が飲むわ」
「うん」そう言われて冷蔵庫に取りに行くのは当然、僕だ。そして嫁さんが飲めないと宣言した分を飲むのだ。

そしてトイレにたって戻ってきた嫁さんはテーブルにはつかずソファーにどっしりと座り込む。ほんのりと赤くなって顔でリモコンでテレビを操作して番組を観ているうちに静かに寝入っていまうのだ。食器やキッチンの後片付けは僕の勤めだ。こうして週末の金曜日の夜が更けていくのだ。

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