嫁さんのお母ちゃんは僕とよく似たマイペース
「子供ができても私が一番やからな」
「うん」
そう約束して僕たちは結婚した。その約束が守られているかどうか聞いて確かめてみることはしない。でも最近、出張先で飲んで寝る前なんかにふと反省することがある。僕は嫁さんを大切にしているかなと・・・
「こっちの部屋ちゃんと掃除機かけてくれた?」買い物から帰ってきた嫁さんが奥の部屋から声がする。
「かけたよ」そう返事をすると静かになった。暫くして部屋から出てくると
「髪の毛とか落ちてたで、どこに目つけてるんよ?」そう言いながらハンディ掃除機をもってまた部屋に戻っていった。ビューンと勢いよくファンが回る音が聞こえる。
「んとに、もう、ほんま役にたたへんなぁ」ひとしきり文句を言ってリビングのテーブルに置きっぱなしにしておいた買ってきたばかりの食材をキッチンの冷蔵庫にしまい始めた。
「気を聞かせてなおしといとけよ、役にたたへんなほんまにッ!」
「あんたほんまうちのお母ちゃんと一緒やわ」
「あはは」妙に腑に落ちる一言だと思った。嫁さんは3人姉妹の末っ子だ。一番上のお姉ちゃんは近所に住んでいることもあってたまに遊びに来てくれたりする。ハキハキとしてさすが長女という印象の人だ。2番目のお姉ちゃんは少し遠くて住んでいるのは隣りの県だ。すごく可愛い感じのひとで若い頃はめっちゃモテていたと聞いたことがある。その3姉妹のお母ちゃんは小柄でとってもおっとりした人だ。決して人の前にることなく後ろで静かに笑っている。ずっと前にそのお母ちゃんからこっそり言われたことがある。
「あの子、口が悪いやろぉ〜」当然、末っ子の僕の嫁さんのことだ。
「あはは、大丈夫ですよ」
「なんでも思ったことをそのまま口にだすさかいに」本当に心配している様子で言った。
「はい、わかってますよ。大丈夫ですよ。」僕はそう言って笑った。
「ごめんなぁ〜でもあの子は悪気はないんよ」
「ほんま思ったことを思ったとおりに口に出すさかい」
『許してやってなぁ』と言わんばかりに小さなお母ちゃんは僕に頭をさげていた。
「はい」僕がそう返事をするとお母ちゃんも少し笑ってくれた。
キッチンから台拭きがリビングのテーブルに飛んできた。
「ぼーっとせんと拭いときやッ」今日の晩ごはんは何かなぁ〜 🙂