さすがの僕も一瞬引いた衝撃的な一言
前にも書いたかもしれないけど、僕の嫁さんは食器に結構な思い入れがある。ロイヤルコペンハーゲンとかウェッジウッドといった高価なものも好きではあるのだけれどどちらかと言うと日々の食事で使える食器に対して思い入れがある。ブランドにはこだわりがある訳ではなさそうに見える。でも、前に香港で見つけたウェッジウッド製の香港の有名スポットを形取ったお皿は一瞬で気に入って「これめっちゃいいわ」買ってもいいって聞く前に「これ買うわ」って買ったりもしていた。確かに記念になるしそもそもとても貴重な意味のあるものだし、それは今も思い出としてリビングに家族の写真と一緒に飾ってある。
まぁそんなこともあったりするけど要は自分は気に入ったものをとにかく手に入れたいと思っているようだ。当然だけどね。よく夕飯の支度をしながら「あぁ〜やっぱり魚をおけるちょっと細長いお皿がちゃんと欲しいわぁ」とか、「白くて少し深くなってて小ぶりのお皿がいるわぁ」とか独り言を言っている。煮物とかを作りながらリビングでテレビを見ている僕に「ちょっとこれのお皿とってくれる?」と言ってくる。テレビをみている僕は「はいよぉ」と軽やかに椅子から立ち上がって、でも「どのお皿だっけ?」と必死で記憶を呼び起こしながら食器棚からお皿をさがす。さほど広くないキッチンで手際良くいくつもの料理を仕上げている嫁さんにとっては「タイミング」がとても大切だ。「お皿をとってくれる」と言う時も僕の方はみていない。きっと頭の中でこれをやって次はこれって感じで料理を仕上げる順番から、使ったボールやまな板を洗ってしまう段取りまで計算されつくしているようだ。当然、イラついている。そして自分の思ったタイミングでお皿が手元に届かないとついに僕の方に目をやって「いつも食わしてるやろぉ〜その皿ちゃうッ」そう言うとツカツカと食器棚の前で変にニコニコしながらしどろもどろ僕を睨みつけながら「ホンマ、作りがいがないわッ」「ちゃんとどの皿で食ったかくらい覚えとけっ」と言うのである。「はい」としか返しようがないではないか。だって覚えてないんだから。仕方ないのである。嫁さんの名誉のために紹介しておくが、料理は美味しいと本当に思っているし、必ずテーブルには3品か、4品が最低並ぶ。正直なところ感心するし感謝している。怒り出すのも僕が覚えていないことだ原因であって、覚えようとしていないから仕方ないのだけれど食事が始まると仲良く話しをしながら頂くのだ。その頃には嫁さんの機嫌もすっかりよくなっているのだ。
ただ、食事が終わって片付ける時も僕は怒られることがある。前にも書いたかもしれないが強い思い入れで集めた食器達にはそれぞれに決まったしまうポジションがあるのだ。これがまた曲者なのだ。嫁さんは食事の後片付けは体調が悪いとか酔っ払ったとか余程のことがない限り自分でやり切る。そういう信条ではなく「あんたが洗うとヌルヌルするから嫌やねん」との事だった。なので食事後の僕の役割はおのずと、テーブルを綺麗に拭いてから、すぐに嫁さんの横にいって洗われた食器達を綺麗に拭きあげて食器棚にしまうことになる。そこでも僕は怒られる。嫌らしいことに嫁さんは僕が食器を指定の場所にキチンと戻せるかどうかを背中越しに見ているのだ。本当に頭の後ろに目がついているんじゃないのかなと思えるくらい絶妙のタイミングで「それはそことちゃうやろ、こっちやッ」と指摘してくるのだ。最近は食器達の指定されてポジションで怒られることはだいぶ少なくなった。
そんな嫁さんが「有田陶器市って知ってる?」と聞いてきた。当時、僕らは福岡に住んでいた。関西出身(正確には尼崎だ)の嫁さんも東京行くよりは福岡ならってことで興味をもってついてきてくれた。住みはじめてしばらくしてから嫁さんが不思議そうにに「あんなぁ〜買い物してるとたまに「あぁ関西の方ですかぁ?」って聞かれんねんけどなんでやろぉ〜」と真顔で聞いてきた。
「はぁ〜そりゃわかるやろ、関西弁やろ」関西出身ではない僕が質問してくること自体がおかしいんじゃね?くらいの気持ちでいうと
「えぇ〜?わかる?」真剣に聞き返してくる。
「わかるやろぉ〜」というと
「そうかぁ〜なんでやろぉ」と言う調子だ。決して悪気はないのだけれど関西出身の方々はどこに行っても関西弁で押し通す傾向にあるようだ。さらには関西出身でないやつが関西弁らしく喋るのを嫌がる傾向が強い。たまに僕がテレビのCMで流れる「関西電気保安教会」を音符をつけて「かんさい電気ほぉ〜あんきょうかい♪」と歌うそばから「あぁ〜もぉ全然ちゃうわ」とダメ出ししてくる。話がそれてしまった。
「あぁ〜有田焼きかぁ知ってるよ。柿右衛門でしょ?」と言うと
「毎年、陶器市やってるんだって、行ってみたいわぁ」
「いつ?」
毎年4月末のゴールデンウィーク中に佐賀県で開催される九州の陶器市だ。佐賀県は福岡のお隣県だ。僕も興味がない訳ではないし、ましてや食器に思い入れのある嫁さんが目を輝かせている。二人で出かけることにした。(つづく)